健康を「足もと」から見つめ直そう


◉バランスよく歩くことが肝心

 人間の脳の発達は「歩行」が大きく影響しています。例えば東京タワーのてっぺんに立たされたら、やさしい算数でもなかなか解けません。モノを考えることができるのは平行バランスが確立されているのが条件。そのバランスは歩行によって自然と作られていきます。

足が痛い、体の調子がすぐれないなどの症状があるのはバランスが崩れている証拠。平衡感覚を高めるには自分の足で立って感覚をつかむのが大切。

「生理的な美」は歩行によって形成されます。

また、日頃何気なくやっている動作も全てバランスが大事。「偏り」が人間の体に最も害を及ぼしますので、自分の生活を見直す必要があります。

◉足は「第二の心臓」

 よく「足は第二の心臓」という言葉を耳にします。心臓は血液を送り出すポンプで、収縮時に送り出し、拡張時に戻ってくる(血液の吸引力はない)システム。

 一旦送り出された血液は、体の心臓より上の部分は重力の法則に従って自然と戻ってきますが、心臓より下の部分(足など)は特別な圧力を加えないと戻ってきません。その圧力を作るのが骨格筋(運動の筋肉)で戻ってくるには全身の骨格筋の力が必要になるわけです。心臓と足の筋肉はほぼ同じ形をしており、足に送り出された血液は心臓の仕組みと同じ原理で足の筋肉によって戻されます。

また、心臓の動きは歩くリズムと似ていることからも足は第二の心臓と言われます。筋肉は動かさないと衰退していきますので、足の心臓も正しく機能しなければ、心臓が止まるのと同様の結果を生み出すことになります。

◉「歩行」って何だろう?

 歩行のメカニズムは非常に複雑で、間違った観念で歩くと逆に身体に障害を起こしたりします。私たちの日常は自転車やバイク、自動車を使用することがほとんどですが、本来、人の移動は「自分の足で動くこと」。

 人間を含めた動物の三大生理要素、すなわち欠かすことのできないものに ①捕食 ②移動 ③生殖 の3つが挙げられ、これらはバランスよく組み込まれています。食べるために移動し、また基本的な身体支持器官や、一部の臓器を作るのに必要なのが歩行ですから、正しい歩行ができて初めて無理のない生殖活動を行うことができるわけです。

 体を動かすことが動物の一つの特徴ですから、動かなくなると関節は拘縮、筋肉は萎縮し、機能を失い使用できなくなります。骨折や病気で寝たきりになっていると、「動かない」ことから「動けない」ことになり結果的にも死にもつながりかねません。移動は動物の生死そのものの仕組み。そういう意味から歩行は私たちにとって大切なものなのです。

 

ウォーキング疑問質問箱???


◉1日にどのくらいのペースで歩けばいいの?

 ウォーキングが健康維持やいろんな病気に効果的とは言っても、間違った歩き方をすれば逆効果。歩くペースは身長や健康状態などによって人それぞれ異なりますから、疲れすぎない程度のペースを守りながら自分のペースを掴んでいくことが大切です。

最初は1日に10分~15分程度ゆっくり歩き、1~2ヵ月のうちに40分程度歩くペースを掴みましょう。それにだんだん慣れてきたら徐々に歩幅を広げ歩行量を増やしていきましょう。何事も段階がありますので、急がず、徐々に自分のペースを把握していくのがポイントです。

 

 また、ウォーキングする際には靴選びも大変重要です。ある程度のやわらかさ(クッション)と幅が必要で、甲の部分がきちんとかぶるジョギングシューズが適当です。ワンサイズ大きめのものを選ぶのがよいでしょう。

 

 やさしい歩き方(ヒールタッチ)で、なるべく平坦な道を歩くのが効果的。毎日、同じコースだと左右どちらかに偏りがちなので、時にはコースを逆に回ったりも必要。テニスコートぐらいの広さを8の字に歩くのがバランスのとれたウォーキングと言えます。

 

◉同じ行為の繰り返し、本当に体にいい?

 最近の女子高生にひどい生理痛や異常な出血が多く見られます。これは毎日の自転車通学が原因の一つにも挙げられます。高校生ぐらいの年頃は生殖器を完成させるのに最も大事な時期。腰掛けたサドルからの“クサビ作用の力”が骨盤を割る(開く)ような形になり、このような症状を生み出す結果に。

また、競輪選手は大腿部が太く、それに比べてふくらはぎが細いという体型が特徴ですが、ペダルをこぐ行為だけではバランスのよい筋肉の発達にはつながらず、不自然な発達をします。

いずれもスポーツ同様、同じ行為を繰り返すのではなく、歩行とうまく組み合わせていくことが大事です。

 

◉ウォーキングとスポーツは違うの?

 歩行は前にも述べた通り、動物の三大生理要素の一つで、本来、意識的に行うものではなく食べることと同様に人間が自然に行うもの。一方スポーツは人が創り出したものなので、効果はありますが、その分障害もあります。

 だからと言ってスポーツが悪いというわけではなく、全てバランスが必要。効率性を生むものはバランスを崩しやすいので、スポーツの後は必ず整理運動を行うとか、歩くことによってバランスを取り戻すようにしましょう。

 また、筋肉が腫れぼったく、熱く感じられる時は、氷(いったん水で洗って0℃にした)で冷やすなどの処置を怠らないことが大切です。

 

◉骨粗鬆症にはカルシウムが効果的?

 「骨粗鬆症の予防にカルシウムを摂りましょう」と言われますが、骨を作るのに一番大切なのは骨に圧力を加えること。圧力を加えて初めてカルシウムが骨に沈着されるわけですから、単にカルシウム剤を飲んでいれば、骨が丈夫になるというわけではありません。圧力を加えるにはやはり適度な正しい運動(歩行)が必要です。

逆に骨を引っ張るとプラスを帯びて、カルシウムが抜け出すことになります。