頭痛とかみしめ


◉自分でできる頭痛のコントロール

 いつの間にか始まる頭をしめつける痛み、だらだらと続く頭の芯からの痛み、肩が凝ることもしばしば、皆さんはこのような経験ありませんか?

 

 このような頭痛をいわゆる片頭痛(血管性頭痛)などと区別して、筋緊張型の頭痛と呼びます。最近、歯の痛みとは別に、このような頭痛の症状を訴える患者さんが増えてきています。頭や首や肩などの筋肉の緊張が引き金となり、痛みが始まるのです。原因を細かく分析すると、局所の筋肉疲労や精神的なストレス、上下の歯の噛み合わせのズレ、からだのゆがみなど、多くの要因が複雑に絡み合っている場合が多く、そのため、いろいろな角度からその対処法を考える必要があります。かみしめの習慣とはこれらの要因の一つで、上下の歯を無意識に必要以上に噛み合わせている悪習癖のことを言います。

 

 ところで、通常の生活に必要な上下の歯の接触時間は、1日の中でどれくらいを占めると思いますか?

 

 これは皆さんが考えているよりも意外と短く、食事の時の反復的接触、それに、つば(だ液)などを呑み込む時(1日に600~2000回)の接触を合わせて、約15~20分位と言われています。残りの時間、つまりあごを動かさない、筋肉が仕事をしない状態(生理的安静状態)では、上下の歯は約1.5~2.0mmのすき間を保ちながら離れていると思って下さい。ですから、必要以上に上下の歯を接触させることは、それがわずかな力でも長時間に及ぶと、あごを動かす筋肉の疲労を招き、頭痛や肩こりなどの引き金にもなりかねないのです。

しかし、このような習慣、身に覚えがないという方がほとんどだと思います。ところが、かみしめの習慣の問題点は、それが周りの人からは見えず、注意も受けないので、多くの方が自覚していないところにあります。

 

 まずこの習慣に気付くことが大切です。かみしめを戒めたステッカーなどを家の中の目のつくところに張り、自分の行動の確認起点とします。そして、もし習慣に気付いた時には中止するようにします。そうすることによって得られていく自分の感覚、例えば、頭がすっきりした、肩が軽くなった、などを大事にしてください。その時のイメージ(行動の認知)が潜在する自己を変容させ、習慣からの脱却を助けるからです。

 

 また、あごを動かす筋肉を意識的に弛緩(リラックス)させることも重要です。普段の生活の中で、『唇を閉じて、上下の歯を離し、顔の筋肉の力を抜く』を常に心掛けて下さい。そして、あごを動かす筋肉のストレッチ(大きな口を開けたまま5秒間持続×5セット)を毎日続けることもお勧めします。疲労した筋肉の血行を促進し、痛みの緩和に繋がります。

 

 かみしめの習慣は頭痛などの1つの要因にすぎません。問題は心身にかかるストレスの総和です。ストレスの管理、それを作り出さない環境作りを大切にしてください。例えば、噛み合わせがしっくりこない、どうも噛みづらい、などのお口の環境では、わずかなかみしめでも、顎を動かす筋肉にストレスを与えやすいことは言うまでもありません。ストレスのかかりにくいお口の環境づくり、歯科医師としてお手伝いできると思います。

 

 

緊張型頭痛のコントロール方法


●上下の歯をはなす.

●あごのストレッチをする.

●ストレスをためない.